皆さま、こんにちは。【おもてなしの哲学】です。
サービス業に携わる方や経営者の方に、ポリシーや哲学などを伺う、「おもてなしの哲学」インタビューシリーズ、第12弾。
今回はアメリカのアトランタで連日200名近くのお客様が訪れるレストラン『Umi』にて日本人でExecutive Chefを務める村上 輔(むらかみ・たすく)さんに海外でのレストラン経営やサービスのこだわりについてお話を伺いました。
『Umi』はアトランタに訪れるセレブリティやヒップホップアーティストも来店するレストラン。日本から直送の新鮮な魚を使ったお刺身やお寿司、和食のアレンジ料理など、まさに芸術とも言える食事を提供する『Umi』は、コロナ禍でも中々予約の取れない超人気店です!
文化を超えて人々に愛されるには、必ず素晴らしいOmotenashi(おもてなし)があるはずです。
早速ご紹介します。
仕事を楽しむ働きマン!休みなく働くパワーの源とは
ー村上さんは現在アトランタにお住まいということですが、コロナの影響はいかがでしょうか?また、現在の活動状況を教えてください。
村上輔さん(以下:村上氏):2021年1月まではNYCにいましたが、パンデミック直前に現レストランに転職しました。3月からのロックダウン中もアトランタはNYCに比べ規制も厳しくなく、公共施設、レストランやジムなどは通常通り営業してました。運が良かったです。
現在はアトランタのお店『Umi』でExecutive Chef(総料理長)として就業中です。
また、休日にはNYC在住していた頃からの縁で市内のCafe Barや、マイアミレストランなどのフードコンサルティングやフードイベントを個人で副業としてやっています。
ー休日が休日ではなくなっているように見えます、、、。(笑)とってもお忙しいようですが、お休みはありますか?
村上氏:ありますよ!たまにあるお休みは家にいたり、ジムに行ったりしています。ですが、ほとんどはレストランがお休みの日曜日と月曜日もアトランタから出て、NYCやマイアミなどにコンサルの仕事に行っています。
ーまさに働きマン!笑 そのパワーの源は何でしょうか?
村上氏:単純に仕事が好きというところが源でしょうか。外に出ていろんな人に出会い、それが今後の自分のビジネスに繋がればと常に考えているので、動いている事も苦ではありません。また、副業のコンサル先で知り合いも増え、本業にも繋がりを活かす事ができます。何より日常とは違った環境は刺激にもなり楽しいです!
村上さんは副業に加え時間があるとレストランやカフェなどを巡り美食を追求していらっしゃり、いろんなところに足を運ばれています。それもきっと本業のパフォーマンスに繋がっているのですね。お休みの日も無駄にしない行動力、素晴らしいです!
五感で楽しめるレストラン、そこに秘められたOmotenashi(おもてなしとは)
ー村上さんは東京でのお寿司屋さんに始まり、銀座やイタリア、NYCなど国内外の数々の飲食店でのご経歴がおありですが、サービスで心掛けていることはありますか?
村上氏:デートでも記念日でも接待でもレストランに来て頂いている時間はお客様にとって貴重な時間なので、選んで頂いた方の期待に答えられるよう1つでも思い出に残るような料理の提供や会話を心がけています。もちろん笑いも(笑)
また、邪魔をしない気遣いですかね。会話をするタイミングやお客様同士の雰囲気は特に気をつけ、常に先を予想し、食事の空間も崩さないようにしています。
さらに、盛り付けの面で見た目が魚らしくないようにしています。魚の皮であったり模様が特に女性の方には好まれない傾向があるので、分かりにくくなるよう工夫をしています。
味は最近の日本食ブームと日本の味に慣れてきていらっしゃるアメリカ人が多いので、あまりアレンジはせず、でもアメリカ人好みの辛さや香り、素材、特に食感は気に入って頂けるよう心がけています。
ーお客様との会話を大事にされる一方で、食事の雰囲気や空間を壊さない気遣い、メリハリのあるサービスがお客様に居心地の良さを感じさせ、「また来たい!」と思うサービスに繋がっているのですね。また、見た目や食事の味、食感までの細部に渡るOmotenashi(おもてなし)によって連日満席となるレストランへと繋がっているのですね。
村上さんのレストランに行かれた方々のコメントとして、お店のインテリアや音楽など食事以外でのお褒めも多いと思いますが、こちらで何か工夫されていることはあるのでしょうか?
村上氏:その分野のプロフェッショナルにお任せし、ジャンル毎にその道の匠が最高な物を取り揃えることですかね。
例えば、以前有名建築家のピーター・マリノ氏とコラボをしてレストランを作り上げたことがあります。その時に「アメリカ人に好まれる思考で」と強く言われたことがありました。ピーター・マリノ氏がデザインされたお皿や内装はとても素晴らしく、彼のコレクションであるピカソの絵皿やスケッチ、バスキアなども展示されていました。
それに伴い、お店自体が美術館の中にいるような空間でしたので料理の方も形にはまったものではなく、少し変化のあるものを、と考えました。美味しいのは当たり前なのですが、Luxuryで日本っぽくなく、新しくて面白いものを期待されていたので大変ではありました。彼からは「斬新さ」という一つ新しい感覚を勉強させてもらいました。
ー異国で、新たなパートナーとのレストラン作りは戸惑いや発見の繰り返しだったかと思いますが、広い視野を持つ村上さんは臨機応変に対応し、結果的にお客様の五感を震わせ感動へ導くレストランになったのですね。
宗教や文化、価値観の壁を越え、そこから生まれる芸術の食事
ー海外でレストランを運営するにはとても大変なことが多いと思います。苦労されたことなどを教えて頂けますか?
村上氏:宗教上の問題で食べられない魚やアレルギーへの対応に苦労しました。事前に分かれば問題ないのですが、当日に言われると最初は戸惑い苦労しました…。今では対応できる状態にいつも準備はしてあります。
ーやはり宗教の問題などは避けては通れないのですね。村上さんは日本人でありながら現在のレストラン『Umi』でExecutive Chefの役職を担われていますが、異国で人をまとめる難しさはどいういうところにありますか?
村上氏:26年の経験のうちアメリカに5年、イタリアに5年いますが、やはり文化と言葉の違いですね。特に時間の価値や文化はそれぞれ違うと肌で感じました。郷に入って従い、現地のスタイルに合わせていくことはできますが、やはり結果を求められているので少し変わったインパクトがあり、それでいて受け入れられる料理を日々模索することですね。
海外のレストランは多様な人種の方と働くので、その国々の食べ物や文化を学べる楽しさはありますが、日本でやっているわけではなので用心しながら全てを信用しずぎずに仕事をする難しさはあります。
ーなるほど。聞いているだけでも村上さんのご苦労が伝わります。。。宗教や文化、価値観などのことは共存して進んでいくしかないですよね。そこを理解し上手くお付き合いされている村上さんの適応力の高さが分かりますね。
将来はいつでもどこでも村上さんの味を楽しめる世界に
ープライベートでも食事への追求や発見を惜しまない村上さんですが、これからの目標を教えてください。
村上氏:自分の「ブランド」を作り、それを軸にコンサル業を増やしていきたいです。地方のレストランや他の国での寿司や料理のクオリティを上げ、外食産業の底上げに貢献出来ればと思っています。また、プライベートシェフとして個人宅でのケータリングで価値のあるディナーを提供する事も続けていきたいですね。
コロナ禍で飲食店も厳しい状況ではあると思いますが、相手のことを考えた心のこもったOmotenashi(おもてなし)は必ず伝わるものがあるのですね。
海外の飲食店で経験を積みたい!自分でお店を出したい!という方も世界ではコロナに負けず頑張っている方々が沢山います。希望を捨てずに夢を追い続けてください。
そんな方々を応援できるよう、これからも「おもてなしの哲学」のインタビューは続きます。
次は【青山florist jardin du I’llony】代表取締役 谷口敦史様のおもてなしをご紹介します。
乞うご期待です!